生成AI型ボイスボットとは?従来の電話自動応対(IVR・シナリオ型)との違いを比較表で解説
作成日:2026年2月6日 更新日:2026年2月6日
コールセンターの人手不足が深刻化する中、生成AIを活用した「生成AI型ボイスボット」への関心が高まっています。一方で、「従来のIVRやシナリオ型と何が違うのか」「本当に現場で使えるのか」「お客様対応に使って問題はないのか」といった疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、生成AI型ボイスボットを万能な解決策として扱うのではなく、IVRやシナリオ型ボイスボットと比較しながら、それぞれの特性や役割の違いを整理します。
“すべてをAIに任せる”という発想ではなく、人や既存の仕組みとどう組み合わせるべきか。自社業務に当てはめて考えるための前提知識を解説します。
なぜ今「生成AI型ボイスボット」が話題なのか
コールセンターの課題感は「人手不足からの悪循環」
多くのコールセンターでは、慢性的な人手不足が続いています。問い合わせ件数は大きく減らない一方で、採用難や教育コストの高騰により、人員を増やすことは容易ではありません。
結果として、限られた人員で応答率や顧客応対品質を維持する必要があり、過度な負担が現場の疲弊につながり、結果人材が定着せず人手不足が悪化する、といった悪循環が生まれています。
従来の自動化だけでは限界
IVRやシナリオ型ボイスボットは、適切な窓口への振分けや定型業務の自動化に一定の成果を上げてきました。しかし、想定外の発話や言い回しが増えるほどオペレータへの転送が発生し、「自動化しているはずなのに負荷が減らない」という状況に陥ることもあります。
こういった背景から、より柔軟な対応が可能な生成AI型への期待が高まっています。
コールセンターでの生成AIについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
そもそもボイスボットにはどんな種類があるのか
IVR(自動音声応答)
プッシュボタン入力による分岐を行う仕組みで、構造が単純かつ安定しています。
受付や振り分け用途では有効ですが、ガイダンスを聞く時間がかかることでの顧客体験の低下、高齢者のスマホ操作の煩雑さによる離脱、などにつながりやすい側面があります。
シナリオ型ボイスボット
音声認識を用い、あらかじめ設計したシナリオに沿って会話を進めます。会話内容を厳密に制御できる反面、業務変更時の改修負荷や例外対応が課題になります。
生成AI型ボイスボット
プロンプトに沿って、発話の文脈や意図を理解しながら会話ごとに応答を生成する点が特徴です。
定型業務に加え、曖昧な表現や順不同の情報入力にも対応しやすくなります。
また、LLM×RAGを活用することで、自社マニュアルや製品知識を参照した受け答えも可能です。
比較で見る「従来型(IVR・シナリオ型ボイスボット)」と「生成AI型ボイスボット」の違い
生成AI型ボイスボットは、既存の自動応答を否定するものではなく、対応範囲を広げる選択肢と捉えることが必要です。
- IVR → シナリオ型 → 生成AI型は優劣ではなく「役割の違い」
- 生成AI型は万能ではなく、IVR・シナリオ型・人による応対と組み合わせて使う
- 費用対効果は「ツール選定」より業務の切り分け方で決まる
| 比較項目 | IVR | シナリオ型ボイスボット | 生成AI型ボイスボット |
|---|---|---|---|
|
基本的な仕組み |
番号入力による分岐 |
音声認識+事前定義シナリオ |
音声認識+プロンプト+文脈理解(LLM等) |
|
利用者の操作 |
プッシュボタン |
発話回答だが流れは固定
|
自然な会話で自由に発話 |
|
対応できる会話の柔軟性
|
非常に低い |
限定的 |
高い |
|
強み |
・安定性が高い ・低コスト ・運用がシンプル |
・定型業務に強い ・応答内容を完全に制御可能 |
・応対幅が広い ・言い換え・曖昧表現に対応 |
| 弱み |
・ユーザーストレスが大きい ・離脱されやすい |
・例外処理に適応できない ・表現の揺れの吸収にはメンテナンスが必要 |
・確実性が100%担保できない |
| 主な適用業務例 |
・窓口振り分け ・営業時間案内 |
・簡単なFAQ回答 ・定型受付 ・会話ラリーが少ないアウトバウンド |
・次世代IVR(コールリーズン特定) ・FAQ拡張 ・スムーズな予約受付 |
|
運用・改善の考え方
|
変更は少ない |
シナリオ追加・修正 |
プロンプト・ルール調整 |
|
人との役割分担 |
振り分け後すぐに転送 |
想定外の内容や、シナリオに該当しない場合は人に転送 |
例外内容は転送 |
|
向いている企業フェーズ |
低コストで自動化 |
定型業務を効率化 |
自動化範囲を拡張 |
次からは、ボイスボットのシナリオ型と生成AI型の違いについて詳しく解説していきます。
従来のシナリオ型ボイスボットの特徴とできること
想定内の問い合わせには強い
シナリオ型ボイスボットは、問い合わせ内容や会話の流れが事前に整理できている業務において、高い効果を発揮します。
たとえば、簡単な問合せや代表電話取次、一次受付など、パターンが決まっている業務では安定した応対が可能で、定型業務を確実に処理したい場合には非常に有効です。
説明内容や案内手順がぶれることがなく、一定品質を保てる点もメリットです。
例外・言い回し違いには弱い
シナリオ型は想定外の流れや表現に弱いという特性があります。
たとえば、「住所変更をしたい」というコールリーズンであっても、「引っ越したので登録情報を直したい」「登録している場所が変わった」といった言い回しが混在すると、正しく分岐できないケースが発生します。
また、途中で話題が前後したり、複数の要件をまとめて話された場合には、会話が成立しにくくなることもあります。このため、問い合わせ内容のばらつきが大きい業務では、シナリオ型だけで完結させるのは難しくなります。
そのため、シナリオ型は、範囲を限定して使うことで安定して効果を出せる手法と言えます。
生成AI型ボイスボットの特徴とできること
一問一答ではなく“会話の流れ”を理解
生成AI型は、一問一答を繰り返すのではなく、会話全体の流れを踏まえて応答できる点が大きな違いです。
たとえば住所変更の問い合わせで、
「引っ越したので登録情報を変えたいんですが」
「あと、いつから反映されますか?」
といった複数の要素を含む発話があった場合でも、
「ご住所の変更ですね。お手続き完了後3営業日以内にマイページに反映されます」
と、用件を整理しながら対応します。
途中で話題が前後しても、直前のやり取りを踏まえて会話を継続できるため、利用者側が「ロボットに合わせる」必要がありません。
言い換え・曖昧表現への対応
生成AI型は、同じ意味を持つ異なる言い回しや、やや曖昧な表現にも対応できます。
たとえば、
「解約したいんですけど」
「もう使わないので止めたい」
「契約を終わらせたい」
といった表現を、同じ意図として捉えることができます。
これにより、シナリオ型では想定しきれなかった発話にも対応でき、一次対応や受付業務の自動化範囲を広げることが可能になります。
LLM×RAGによる情報を検索・参照した回答
生成AI型は、LLM×RAGを活用し、あらかじめ指定したFAQやマニュアル、業務資料などを検索・参照したうえで応答することができます。社内マニュアルや製品の規約・説明書などをインプットすることで、自社情報を参照した応対が可能です。
たとえば、
「洗濯機にE99と出ています」 → 「エラーコードE99ですね。排水パイプにつまりが発生しているようです」
「最速でいつまでに届きますか?」 → 「本日18時までにご注文いただければ、明日午前に発送いたします。」
また、回答範囲を限定する用途としても、生成AI特有のハルシネーション対策として有効であり、実業務に適した現実的な活用方法といえます。
生成AI型ボイスボットが適用しやすい業務・注意が必要な業務
生成AI型ボイスボットをあてはめた時の具体的な業務例を紹介します。
適用しやすい業務例
-
次世代IVR:コールリーズン特定と窓口振り分け
「住所変更について」「解約したい」「進捗を確認したい」など、利用者は必ずしも正確なメニュー名を選んでくれるわけではありません。
生成AI型ボイスボットであれば、自由発話から要件を推定し、適切な窓口へ振り分ける“次世代IVR”として機能し、振分けやオペレータの聞き直しを減らす効果が期待できます。
-
FAQ対応:学習データをもとにした回答
RAGを活用し、製品情報・規約や応対マニュアル等の自社情報学習を行うと、お客様の質問に対し学習したデータを参照・類推して回答を行います。
表現の揺れを吸収しながら正しい情報を返すことができるため、複雑な内容のFAQにも対応できます。
-
複数項目聴取:順不同で回答しても回収、不足項目を確認
例えば予約業務において「希望日時」「連絡先」「内容」など、複数項目を聞き取る必要がある業務は、生成AI型との相性が高い領域です。
利用者が順番を気にせず回答しても、不足項目があれば自然に聞き返すことができるため、途中離脱や聞き漏れを防ぎやすくなります。
注意が必要な業務
-
回答の正確性・確実性を重視する業務
料金確定、契約条件の最終確認、法的解釈を伴う説明など、一言一句の正確性が求められる業務は慎重な判断が必要です。
生成AIは確率的に文章を生成する特性があるため、万が一の誤解釈や表現揺れがリスクになる業務には不向きです。
-
申込・購入など契約に直結する業務
利用者の意思確認や同意取得が必須となる業務は、人による最終確認を前提とした設計が望まれます。
生産性向上だけではない、生成AI型ボイスボットの副次的な効果「顧客体験(CX)向上」
ボイスボットの導入効果は、応対件数の削減や人件費圧縮といったコールセンターの「生産性向上」に目が向きがちです。しかし経営層は、コールセンターには高い顧客体験(CX)の提供、さらには顧客満足度の向上を常に期待しています。
生成AI型ボイスボットが顧客体験に好影響を与えるポイントを見ていきましょう。
対話の繰り返し・たらい回しの減少
従来のIVRやシナリオ型では、「ガイダンスを延々と聞く」「最初から聞き直される」いった体験が発生しがちで、顧客の不満を生みやすいポイントでした。
生成AI型では、これまでの会話内容や用件の文脈を踏まえて対応できるため、同じ質問に何度も回答する必要がありません。
一次受付から振り分けまでの過程で情報が整理されることで、顧客側のストレスが軽減され、結果として「たらい回し感」が減少します。
感情に寄り添った対応
生成AI型は、人の感情を完全に理解するわけではありませんが、発話のトーンや言葉選びから、困惑・不満・焦りといった状態をある程度くみ取ることができます。
そのため、「お困りなのですね」「状況を整理しながら確認します」といったワンクッションのある応答が可能になります。
これにより、無機質な応対と比べ、心理的な抵抗感が下がり、「話を聞いてもらえている」という印象を与えやすくなります。
機械的な話し方の解消
シナリオ型では、どうしても定型文の繰り返しになるため、利用者に「機械と話している感覚」を少なからず与えてしまいます。
生成AI型では、同じ内容であっても言い回しに揺らぎを持たせたり、直前の会話を踏まえた返答ができるため、応答が一律になりにくいという特徴があります。
結果としての「顧客体験(CX)の安定化」
顧客体験の観点で、生成AI型ボイスボットの価値は、「すごい体験ができる」点よりも、「悪い体験を減らせる」点にあります。
待たされる、聞き返される、冷たい対応をされる、といったマイナス体験を減らすことで、CXは改善します。
生産性向上とあわせて、中長期的な顧客関係の維持・ブランド価値の下支えとして評価できるCX点が、生成AI型の副次的な効果といえるでしょう。
生成AI型ボイスボット利用時の注意点
よくある失敗・勘違い
生成AI型ボイスボット導入で失敗するケースには、いくつか共通した勘違いがあります。
この勘違いを理解しないと、導入検討・PoC時に活用方法と効果を検証しきれずに終わってしまうことがあります。
- 「人から完全に置き換えられる」という期待
生成AIは万能ではありません。人の代替ではなく、人の負担を減らす存在として設計しないと、期待値と現実のギャップが生じます。
- 業務設計を変えずにAI活用を当てはめる
既存フローをそのままAIに置き換えるだけでは、効果は限定的です。AIが得意な部分に業務を寄せる再設計が不可欠です。
- RAGに使用する資料が未整備
生成AI型が学習する情報が古いものだったり、場所によって書かれている内容が異なったりしていると、誤情報の回答、ひいては顧客の信頼性の低下につながりかねません。
ただ社内にある情報を入れればよいのではなく、情報の見直し・更新はできているか、資料内に余分なノイズは入っていないか、読み取りがしやすいよう構造化されているかなど、注意する必要があります。
生成AI型活用時に考慮すべきリスク
生成AI型ボイスボットは、柔軟な対話や文脈理解といったメリットが注目されがちですが、同時にシナリオ型にはなかったリスクを内包しています。
重要なのは「危ないから使わない」ではなく、どのリスクが、どの業務で問題になり得るのかを正しく理解することです。
- ハルシネーション(誤回答・事実でない説明)
ハルシネーションとは、AIが事実と異なる内容や、根拠のない説明を行ってしまう現象を指します。
コールセンター業務においては、製品情報、料金や契約条件など、正確性が強く求められる内容などで特に問題になりやすく、「間違った案内をしてしまう」こと自体がリスクになります。
- セキュリティ・情報管理リスク
生成AI型を利用する場合、電話応対で取得する個人情報や応対履歴がどこに送信され、どのように扱われるのかを把握していないと、情報漏洩リスクにつながります。
特に注意すべきポイントは、
· 音声・テキストデータの保存有無
· 学習用途への二次利用の有無
· クラウド基盤やデータの保管場所音声
などがあります。
- コンプライアンス・説明責任の問題
生成AI型は柔軟な応答ができる反面、「なぜその回答になったのか」を説明しづらいという側面があります。
これは、監査対応やトラブル発生時の説明責任において課題になることがあります。
例えば、
· 誤案内が発生した際に原因を特定できるか
· 応対ログをどこまで保存・確認できるか
· 想定外の発話を抑止できる仕組みがあるか
といった点など、運用とガバナンスをセットで考えることが求められます。
これらのリスクは、生成AI型そのものが危険というよりも、業務設計や運用ルールが不十分なまま使うことによって顕在化します。
逆に言えば、適用業務を限定し、制御ポイントを明確にすれば、リスクは管理可能な範囲に収めることができます。
生成AIは“どこに使うか”で成果が分かれる、導入にあたってのチェックポイント
ここまで解説してきた通り、生成AI型ボイスボットは、その特性をきちんと理解した上で導入計画設計することが、リスクと価値を両立させる鍵となります。その考え方を、業務整理、運用体制、導入ステップの3つでご紹介します。
業務整理チェックポイント
従来の業務を分析・分解し、呼量や特性を整理することで、「生成AI型ボイスボットに任せたいこと」が見えてきます。
- 「正確性」より「柔軟性」が求められているか
- 問合せ内容は定型か、対応範囲が広いか
- 固有名詞の表現の揺れが幅広いか
- 人が対応すべき内容ではないか
運用体制チェックポイント
- 業務の内容を踏まえ、IVRやシナリオ型ボイスボットの方が対応に向いていないか
- AIが対応できない場合のエスカレーション設計があるか
- オペレータはエスカレーション対応を踏まえたシフト設定になっているか
- 運用後にモニタリング・改善に取り組める体制があるか
導入ステップ例
段階的に適用範囲を広げることで、リスクを抑えながら効果を確認できます。
- 対象を限定したPoC期間
- 振り分け・一次受付のみに適用
- LLM×RAGを活用した一部FAQ対応
- 非定型領域や対象範囲の拡張
まとめ|生成AI型ボイスボットは「選択肢の1つ」
生成AI型ボイスボットは、従来型では難しかった領域を補完し、自動化の幅を広げる選択肢です。生産性向上だけでなく、CX向上にも寄与します。一方で、すべてを任せるのではなく、業務特性に応じた役割設計と段階導入が重要です。
生成AI活用を検討するうえで
ソフトフロントジャパンでは、業務内容や運用体制を踏まえた生成AI型ボイスボット活用の検討支援を行っています。まずは自社業務を整理するところから、検討を進めてみてはいかがでしょうか。

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